業務は大きく5つに分類されます。
各業務の目的や重要性、魅力についてご紹介いたします。

①F-SE(フィールド・システム・エンジニア)

1.打合せ & 調査

システムの内容や方向性の決定、現状把握の為、各仕事の一番最初に行われる業務。
相手は、施主さん・ゼネコンさん・サブコンさん・他メーカーさん・ビル管理者さんなど規模や場合により様々ですが、一番多いのはサブコンさんになります。
内容としては、双方からの説明や情報収集、問題提起や解決策の模索、改善点提案、工程確認といったものがあり、「より良いシステムを構築するには」という目的を大前提として、安全面やコストを考慮しながら関係者で意見交換を行います。BASという商品の良し悪しだけでなく、工事手順や工法、保守点検の簡潔さなど全てこの打合せ内容や濃度で決まります。

また打合せ相手からは「パナソニックさん」と呼ばれる立場であるため「大きい看板を背負って仕事をしているんだ」と改めて気づかされる。そんな責任重大な業務になります。

調査業務は、主に既設BASのリニューアル工事や追加・変更工事の際に行う業務になります。
既設BASのシステム構成や信号授受の方式、建物運用での使用状況や周辺機器の取付状況など、 ”既設BASのすべてを把握する”ということを目的とした業務になります。


時々、何年も前に自分が納めたBASの調査を担当することがあり、当時の記憶が蘇り少し懐かしさを楽しみながら行っています。

リニューアルや追加変更工事の実作業は、短期間で行われることが多いため、より効率の良い・安全な工法を検討しながら調査を進めます。打合せ業務と同様、調査の質や濃度で実作業の手間や段取りが雲泥の差となるので、責任は重大です。
そして最も重要なことが、ユーザーであるビル管理者の方からのヒアリングになります。既設BASからの改善要望や今後のシステムの重要なヒントを得られたりするので、積極的にヒアリングを行います。

打合せと調査の業務において、最も重要なことは「正しい"べき論"をもつこと」になります。そのためには、正しい知識と正しい技術を持っていることが必要で、それは成功の積み重ねだけでは得難く、失敗の経験もあるからこそ培うことが出来るものなのかも知れません。

2.F-SEサポート

打合せ業務や施工時に使用する資料、社内のエビデンスとしての資料等の作成やチェックを行う業務。
主にExcelを使用、Powerpointや稀にAutoCADを用いることもあります。

お客様や他メーカーから頂いた資料、現場で入手した施工図などをチェック。またこれらの資料を基にBASとしての構成図や監視点リスト、配線接続表などの作成を行います。根気のいる地味な仕事のイメージを持たれる方もいるかと思いますが、間違い探しや謎解きをやっているようで、楽しめる仕事です。もちろん知識があってこその業務となるので誰でもできる仕事ではありませんが、それゆえに難度の高い間違いや謎が解けたときはロールプレイングゲームのラスボスをやっつけたような爽快感が味わえます。

また単に資料作成やチェックと言葉では言えど、案外重要な仕事です。例えば、施工図の間違いを指摘できなければ、間違った施工が行われシステムが構築できなくなりますし、謎が解けた気になって作成した監視点リストですが、実は謎が解けてなかったとなればBASのソフトの作りこみからやり直しになります。

何よりも資料の怖さというのは、たった数枚の資料に基づいて多くの人が動いている点です。口頭での指示に間違いがあったとしても、その被害は口頭指示を受けた人だけですが、資料の場合、その資料が何人の手に渡っているか解らない、少しのミスが多くの人に影響を与えてしまう可能性が高くなります。この波及性を考えると本当に重要な業務だと理解できると思います。

間違い探しや謎解きのような楽しさを味わいつつも、その重要性や責任度合いを考えて行う必要がある、とてもやりがいのある業務になります。

②設計業務

1.グラフィック作成

建物やBASの情報・状況を集約したグラフィックを作成する業務。
「グラフィック」とは、BASのオペレートサポートを目的とした絵のことです。

BASは、視界にない設備の情報や操作をビル管理者に提供するシステムと言えます。
地下の監視室に居ながら、最上階の部屋の室温を把握することや、10階廊下の照明を点灯することが出来るシステムということです。
では、建物の情報を監視室モニターで把握する際に、『最上階 事務室東側の室温は21.2℃』『10階 階段前廊下の照明は点灯中』と文章で記載されているよりも、図や絵の中で該当するエリアが『 ココ 21.5℃』『ココ 点灯中』と表されている方が一目で状況が分かりますよね。情報を視覚化し、より分かりやすく、より操作しやすく、こういったオペレートサポートを目的としています。

グラフィック作成とは、PCでこの絵を描く業務であり、主にBASの専用ツールを使用する他、AutoCADやillustratorなどのソフトを使用することもあります。平面図や断面図、系統図やブロック図がベースとなりますが、”いかに正しく分かりやすく視覚的に把握できるか” が重要になるので、絵としてはシンプルで見やすく、かつ必要な情報が正しく表現されていることを目指さなければなりません。これがこの業務の難しさでもあり、やりがいに繋がる部分でもあります。

ビル設備は一つ一つは単純でも、それらが複雑に関わり合って複合設備として成り立っています。この仕組みや関わりを知識として正しく理解し、その複雑さを簡素化させ簡潔に表現できる技術があってこその業務。 BASの顔と言っても過言ではないグラフィックの作成業務は、まさに責任感とやりがいに満ちた業務です。

2.管理点データ作成

F-SEサポート業務で作成した監視点リストを基に他の必要な情報を加味しながらデータ作成を行う業務。
この情報はパナソニック製BASの決まり事である事が多く、単位の設定や警報音の設定など監視点リストには載っていない情報の入力を行います。多くの社員が最初に経験する実務でもありますが、使用するのはBASの専用ツールであり機種ごとに異なるため、複数の機種を同時進行で行うと初めの内は混乱するかもしれません。

BASは、この管理点データをインストールして初めて稼働できようになるため重要な業務になります。データにミスや過不足があると正しくインストールできなかったり、後の試験調整業務が滞ったりするので慎重に進めたい業務です。

また単なるデータ入力として行うだけでなく、F-SEサポートで作った監視点リストに不合理な点がないかなど、チェックを行いながら入力していくと完成度が向上するので、前後の業務に気遣いながらやり遂げたい業務となります。

③施工業務

1.据付工事 & 機器取付工事

実際の建物の現場で、盤や機器の取付工事を行う業務。
BASは概ね「センター装置」「端末機器」に分けられます。それぞれの分類として、センター装置にはデスクタイプ、自立盤タイプ、壁掛盤タイプがあります。端末機器には、集中設置方式(RS方式)と分散設置方式といったものがあります。さらに分散設置方式には、壁などの仕上げ面に取り付けるタイプ、天井裏などに取付けるタイプ、動力盤や電灯盤などの配電盤内に設置するタイプに分かれます。当社では、大きな機器の取付でアンカー打設が必要な作業を据付工事、小さな機器の取付を機器取付工事と呼び分けしています。

BASに携わる作業での建築現場への乗り込み時期は終盤で、一般的にイメージされる建築中の工事現場ではなく、天井・壁の仕上げ工事は完了しており、床の仕上げ工事と同じくらいのタイミングで乗り込みになることが多いです。そのため、100kg前後の自立盤の据付工事となるとかなり気を使います。会社は違えど同じ建築現場で働く仲間が綺麗に仕上げたものを汚したり傷つけたりしないよう運搬ルートの確認や要所の養生、作業後の清掃など丁寧に行います。

機器の取付は水平が基本です。既に隣に盤や機器が付いている場合には、水平だけに拘らず隣との平行も意識します。工事経験者には常識的な話だと思いますが、自分よがりな工事は避けたいものです。今後何十年と残るであろう作品を仲間と一緒に作り上げるんだという気持ちがとても大事な業務になります。


2.結線工事(端末処理工事)

センター装置と端末機器の間には通信配線が、端末機器と取合い対象機器の間には信号授受用の個別配線があり、これら配線の接続工事を行う業務になります。

工事種別としては「電気工事」になりますが、当社ではこの中でもセキュリティに関する工事を「電気通信工事」に分類しています。一般的には弱電工事と呼ばれることが多いですが、工事種別に弱電という区分がなく電気工事または電気通信工事という工事種別になります。

弱電とはどういう電気か?明確な法的根拠は記されていないようですが、「電圧が48V以下の電気で、モーターを回すようなエネルギーとしての使用目的ではなく、信号の伝達を目的とした電気」というのが一般的な解釈のようです。
弱電で使用する電線なので直径も1.2㎜や0.9㎜と細く、信号伝達用ケーブルがメインとなります。その為、腕力や体力は必要ないのですが、端末処理する箇所数が多いため身軽に動き回れる装備で行います。

一般的な電気工事では、万が一誤結線があった場合、機器が動作しないという事象になりますが、弱電の場合、<違う機器が動作する・停止操作により起動する・誤った情報が発信される>などその制御回路に影響が出ることで二次災害に発展することもあるため、特に作業後の見直しは必須です。

単純な速く・正確に・美しく作業ができるようになってくると、「仕事が楽しくなってきた」と言う社員も少なくありません。

④調整

F-SEを経て工事完了後のテスト運転システムの立ち上げやソフトのインストール、他設備との連携を含めた動作試験を行います。また官庁検査の立ち合いや、お客様への取扱説明など竣工を前にした最終段階の業務となります。


初めて作成しインストールしたソフトや自分で結線工事をしたものが、
正常に動作したときの感動は今でもハッキリと覚えています。
逆に上手く動作しなかった時はプチパニックに…

ユーザー目線に立ち、もし使い勝手に不便を感じる部分があれば、それまでの仲間の労を無にしてでも手直しを指示しなければなりません。なぜなら、パナソニックの一員として最後に商品に触れ、そしてお客様に手渡す仕事。それが調整業務だからです。


⑤メンテナンス


ユーザーに引き渡した後も、各ビルシステムを末永く安心してご使用いただく為に行う業務全般実際にシステムを運用中の建物などでの作業となります。冬は暖かく夏は涼しい快適なビル内での作業が多くなりますが、常にお客様の目の前での作業が多く、また運用中のビルなので万が一にも事故は起こせないという緊張感のある作業になります。 パナソニックの一員として、ユーザーとの接点が一番多い業務です。

 

保守

定期的に行う点検作業。主に電圧や消費電流・伝送波形などを計測し、各パーツの劣化の程度や寿命を予測し、お客様への保全や周知の提案を行います。ユーザーの方と定期的に会うことになるので、親しく接してくれるお客様や「信頼されてるな」と思えるお客様が増えてくると楽しくなってきます。 自分たちの商品の知識だけでなく、設備の知識やそのビル特有の知識がとても重要な業務になります。

保全

点検などにより劣化の程度が著しいパーツを確認し、交換や補正を行う業務。致命的なシステム障害を未然に防ぐことを目的としています。 単に「年数が経過したから」行うだけではなく、「昨年までは24.2vだったけど、今年は24.6vになってる」といったように劣化の度合いを知るためには、正常な運転時との比較が必須となります。経験と過去のデータがとても大事な業務です。

修理

劣化や破損が見られるパーツの修理や交換、また故障原因の調査や再発防止策の対応などを行います


修理の現場へ行くと、BAS故障の為にビル内を走り回って対応されるビル管理者さんの姿が…
こちらも出来る限り早急に復旧すべく奮闘。無事に問題が解決し、普段通りの業務を行ってもらえるようになると「本当にありがとうございます」と救世主のように言っていただけて嬉しくなりました。


BASに限ったことではないですが、当たり前にあると普段は何とも思わないのに、無いととても困るのがBASですそれが故に修理が終わるととても喜んで頂ける、そんな作業になります。ただBASのパーツはビル内全域にあるので原因調査は一筋縄ではいかないことが多く、長い時間を要することも少なくありません。技術や経験という力量がハッキリとわかる業務になります。